グランドセイコーからSEIKOのロゴがなくなってしまいましたね。これはただのデザイン変更ではなくブランドとして非常に大きな意味を持ちます。他業界の高級ブランドの戦略からセイコーの目指す先を紐解きます!
(出展:Seiko Premium Boutique Ginza)
トヨタは高級?レクサスは高級?
トヨタとレクサス。どちらもトヨタ自動車だけどそのイメージの違いはどこから来るのでしょうか?
いきなりですが質問です「トヨタは高級なイメージですか?」
恐らく多くの人はトヨタに高級なイメージはないかと思います。
何故なら誰もが乗っていますもんね。詳しい人なら「モデルによって違うよ。クラウンは高級だけどカローラやアクアは手頃だし」と言うかもしれません。実際その通りだと思います。
同じトヨタでも高級車は存在します。それでもトヨタが高級なイメージと答える人はかなり少ないでしょう。
それでは次の質問です「レクサスは高級なイメージですか?」
こちらに関してはレクサスを知っている人ならほとんどの人が高級なイメージがあると答えるのではないでしょうか?
多くの人にとってレクサス=高級というイメージが確立されています。不思議ですよね。クラウンといった高級車を擁していてもトヨタに高級なイメージがありません。一方のレクサスは高級ブランドとして認識されています。その違いはどこにあるのでしょうか?
ブランドのイメージは最低価格に大きく左右される
レクサスが高級なイメージを持つ大きな理由のひとつは最も安く買おうとしても高額になる点です。つまり最低価格が高いのです。これはブランドロゴを入手する金額の高さ。つまり購入するハードルの高さにつながります。
セイコーとロレックスの最低価格
セイコーならSEIKO 5やクォーツで10,000円あれば購入可能です。つまりSEIKOのロゴが欲しければ10,000円出せば手に入るということです。
一方のロレックスは安くてもオイスターパーペチュアルで400,000円ほどします。ROLEXのロゴを手にするには最低でも400,000円出さなければいけません。
このハードルの差は歴然です。SEIKOは気軽に買えるけどROLEXはよっぽど気合い入れないと買えないですよね。こうしたハードルの差がブランドイメージの一端を担っているのです。
高級であることと高性能であることは別問題
実際セイコーはロレックスと同じくらい高価な時計も作っているし品質も劣っているわけではないです。特にグランドセイコーのムーブメントは世界屈指の優秀さです。
ただセイコーが高級な時計を作っていても、優れたムーブメントを持っていてもブランドイメージとしてはロレックスの方が高級と認識されているわけですね。
高ければ良いという訳でもない
誤解を招かないように補足しておくと僕は「高級であれば優れている」ということを言いたいのではなく「あくまで高級なイメージが定着している」ということです。今度はまた少し話題が飛んでジュエラーについて考えてみます。
ティファニーのブランドイメージ
ティファニーは世界5大ジュエラーの一角で有名ブランド。僕は結婚指輪も婚約指輪もティファニーです。
購入にあたっては妻と一緒に色々見て回ってお互いが気に入ったものを選びました。もちろんデザインも気に入ったけどブランドイメージも大きく影響しました。妻は「何となくティファニーは親しみやすくていい」と言っていて僕も同じ感覚でした。
ティファニーは金・プラチナといった貴金属以外にもシルバーのアクセサリーや食器の商品展開があります。そのため若い人がプレゼントで購入することもでき若い頃から慣れ親しむことができるのです。
つまりティファニーは高級ブランドでありながら親しみやすいイメージを持たせることに成功していると言えます。
ハリー・ウィンストンのブランドイメージ
一方同じく世界5大ジュエラーのハリー・ウィンストン。あまり聞き慣れないかもしれないですが女子なら誰もが憧れる超高級ブランドです。最近DAIGOさんと北川景子さんの婚約指輪がハリー・ウィンストンでお値段1,000万円越えだと話題になりました。
お店の入り口からして高貴なイメージがあります。入り口にドアマンがいるんですけど門番にしか見えないです。倒さないと入れない空気感。もし倒してお店に入っても緊張で体力が消耗されます。
かなりオシャレをしていかないと恥ずかしい気分になること間違いなしです。ちなみに5大ジュエラーの「ヴァン クリーフ&アーペル」も凄まじいです。普通に1000万円以上の時計が売っています。ドン引きですよ笑
ここで言いたいことは高級ということはその反面一般人が近寄りがたい雰囲気を持つということです。
セイコーにはセイコーの良さがある
話を時計に戻します。セイコーというブランドはトヨタと同じで大衆的なイメージがあります。それは決して悪いことではなく「日本人に親しみやすい」「質実剛健」といった印象につながっています。
僕がビジネスでグランドセイコーに使い勝手の良さを感じるのはそういった面が大きいです。この写真とか時計に詳しくない人からみたらどうみてもSEIKOですよね。一方詳しい人からみたら堅実な印象につながります。
グランドセイコーをスイスと戦える高級ブランドに
セイコーが見据えているのは海外です。セイコーの中堅的なイメージではなく、グランドセイコーという高級なイメージを定着させてスイスの高級時計に対抗しようとしています。まさにグランドセイコーはレクサスを目指していると言えます!
高級なイメージを定着させるために
「グランドセイコーとセイコーは別なんだよ!」というメッセージを強く発信しています。
- グランドセイコーからSEIKOのロゴを外す
- グランドセイコーのWEBサイトをセイコーとは別のサイトに
- 銀座にセイコープレミアムブティックを開店
ブティックはまさに高級そのものの内装です。
(出展:Seiko Premium Boutique Ginza)
SEIKOのロゴがなくなると一見してセイコーではないですよね。
こうすることによって高級なイメージのグランドセイコーから大衆的なイメージのセイコーを切り離す狙いがあります。そうやってグランドセイコーというブランドを確立した先にスイスと戦えるという算段なのでしょう。
今後グランドセイコーが海外でどの様に地位を築いていけるのか楽しみです!
セイコーとシチズンは真逆の道を進む
最後に方向性の違いが明確になったセイコーとシチズンの両雄について考えます。
シチズンは国内時計メーカーという認識だけの人は衝撃を受けると思います。現在シチズンはLuxury、High、Mid、Fashion & Lowの4つにブランドをカテゴリ分けするマルチブランド戦略を展開しています。そしてそのブランドは数年毎に買収しておりシチズンは一大時計グループとなっています。
つまり両者は別の道を歩み始めています。
- セイコーはグランドセイコーを高級ブランドにしていくという戦略
- シチズンはシチズンに足りない部分を買収で補っていくという戦略
まだまだ両者の戦略はこれからなので今後の動きから目を離せませんね!
今回はちょっと珍しい切り口のお話でした。ただユーザー視点でいくとブランドイメージも大事だけどいい時計かどうかが最も気になる点ですよね。それは近いうちSEIKOロゴがなくなったグランドセイコーのレビュー記事を書く予定です。是非そちらも見てくださいね!
ではまたっ