今回はちょっとマニアックなスイス時計業界の話です。スイスの時計グループは大きく3社ありあなたの知るブランドの多くはいずれかに属しています。そんな時計業界で今「大きな事件」が起きています。時計好きなあなたは要チェックです!
スイスの巨大な時計グループ
スイスの時計グループは非常に強大です。特に次の3グループは誰もが聞いたことあるブランドを多く傘下に収めています。
- スウォッチグループ(スイス)
- リシュモングループ(スイス)
- LVMHグループ(スイス・フランス)
スイス時計三大グループ
世の中の高級時計の多くは下の3グループのどれかに入ってるんです!下は多くて書ききれないのでメジャーどころを抜粋しました。
- スウォッチグループ傘下 オメガ、ブレゲ、ブランパン、ハミルトン、ETA社など
- リシュモングループ傘下 カルティエ、パネライ、IWC、ヴァシュロンコンスタンタン、ジャガールクルトなど
- LVMHグループ傘下 タグホイヤー、ゼニス、ルイヴィトン、ブルガリ、ウブロなど
三大グループに属さない企業
かなり多くの有名企業が上記グループに入っていることがわかると思います。逆に入っていない有名どころは下に書いたあたりですね。
- 雲上 オーデマピゲ、パテックフィリップ
- 高級 ロレックス、フランクミュラー
- 日本 セイコー、シチズン、カシオ
ブライトリングも最近までは独立系企業だったのですが、2017年4月28日にイギリスの投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズに買収されました。おそらく今後もこういった業界の変化は度々起こるでしょう。
ETA社ムーブメント供給停止問題について
時計業界の再編が進む中最も大きな問題としてムーブメント供給停止というものがあります。かなり乱暴に説明すると、時計の心臓部であるムーブメントを作っている会社が
「もう数年したらおたくにムーブメントの供給やめるから!」
「「「えっ?!僕たち時計作れなくなるじゃん!!」」」
そんな感じです笑
ETA社について
スウォッチグループ参加のETA社は非常に優秀なムーブメント製造企業です。あらゆる時計メーカーにムーブメントを供給しています。供給されている企業は一例ですがこんな企業があります。
オメガ、タグホイヤー、パネライ、ブライトリング、フランクミュラー、ハミルトン、オリス、ティソなどなど
驚きじゃないですか?これだけの有名企業の時計がETA社のムーブメントを搭載してるという事実。つまり別のブランドだけど中身のムーブメントは全く同じといったことが起きるのです。
ETA社のムーブメントを使うメリット
ETA社の世界一のムーブメントメーカーです。そのため高品質でありながら価格を抑えて製造することができます。
- 世界一の実績をもっているためムーブメントの安定感がある
- 大量のムーブメントを作成することにより安価に提供されている
- オーバーホール等のメンテナンスを対応できる人が多い
デメリットは被ったり希少価値が薄いということくらいです。時計の機能としては完成されています。僕みたいにお小遣いでやりくりしている人にとってはオーバーホールが安くできるETA社のムーブメントは魅力的だと思います。
ETA社のムーブメント2020年に提供停止
そのETA社が2002年にムーブメントの供給を停止することを宣言しました。当初2006年には供給を停止するとしていました。そうなると今までETA社のムーブメントで時計を作っていたメーカーは時計を作れなくなるということです。ただスイスの時計業界にとってあまりに影響が大きすぎるため紆余曲折を経て2020年に停止されることに決定しました。
2020年1月1日以降、スウォッチグループ以外の各社にムーブメントの供給を行わなくなります。これはスイスの時計業界にとって非常に大きな事件です。
ETA社のムーブメントの影響力について
さてこれがどの程度の影響力をもつ決定なのでしょうか?
時計におけるムーブメントは心臓部です。正確な時間を刻むという時計の最も大切な機能を果たします。ETA社のムーブメントは安価で高い精度を誇っていたため各時計ブランドからは非常に重宝されていました。
各時計ブランドはETA社からムーブメントを購入してそれを自分のメーカーの時計に載せて完成させています。あるタイミングではスイス製機械式時計の8割以上がETA社のムーブメントを載せていたほどです。
つまり多くの時計メーカーは今まで通りでは時計を製造できないという現実に直面したのです。
どうしましょう…
今後のスイス時計業界について
何故こんなことになってしまったのでしょうか?そしてこれからどうなってしまうのでしょうか?
そもそも何故こんなことになってしまったのか?
- スイスの時計産業が発展しなくなるから
- スウォッチグループとしてお手軽スイスメイドの時計で金儲けさせたくない
「中身を作らず外装とブランドだけで金儲けできてしまっている」
そんな状況になっているスイスの時計産業です。このままでは研究開発をせず産業が発展することがないという懸念を唱えたのがスウォッチグループです。確かにETA社の同じムーブメントを使っていても各社のブランド力によって価格が釣り上がっているというのが現実です。
例えば僕の所有する時計で言うとタグホイヤーとエポスがETA社のムーブメントを載せています。エポスは30,000円台で購入しましたが、タグホイヤーになると桁が1つ増えて約200,000円しまいます。もちろん文字盤の仕上げも違うしムーブメントを自社でチューンナップしているためその分金額が増えます。それは仕方ないですがETA社のムーブメントの価格以上にブランド料で値段が変わっているのが実態です。
「うちのムーブメントを安く仕入れ高く売るライバルグループがおもしろくない」
先の理由が表向きの理由だとするとこちらは本音の理由です。もちろん表向きに発言されるわけもないのである程度は推測です。ただスウォッチグループからするとライバル企業に優秀なムーブメントを安く提供してそれでライバルがどんどん強大になっていくのが面白くないと思うのは自然なことです。
ETA社のムーブメントを使えない各社はどうしたらいいの?
ムーブメントが供給されないとなると選択肢は2つしかありません。
- 自社でムーブメントを開発する
- ETA社以外のムーブメント会社に供給してもらう
自社でムーブメントを開発する
体力のある企業はすでに自社開発に踏み切り続々と自社開発ムーブメントが生み出されています。ただ自社で莫大な費用をかけてムーブメントを開発をするというのは一言でいうほど簡単ではありません。ましてや今まで販売していたETA社のムーブメントと比べても見劣りしないものを開発しなければいけないので。
ETA社以外のムーブメント会社に供給してもらう
一方体力的に自社開発が厳しい企業は別のムーブメント会社から調達する必要があります。ETA社以外で有名なムーブメント供給会社はセリタという会社が有名です。その他ではタグホイヤーはセイコーからムーブメント製造のため部品を調達することを決定したりと各社様々な対応をしています。
見逃せないこれからの動向
ある意味これまで自社で研究開発をあまり行ってこなかった企業もそんなこと言っていられない状況に追い込まれています。実際ETA社の宣言後多くの自社開発のムーブメントを搭載した時計が生みだされています。
スウォッチグループの言うようにこれからスイスの時計産業が発展する可能性が大いにあるのでこれからは「自社開発ムーブメント」「マニュファクチュール」という言葉に注目してください。またひとつ時計に興味がでるかもしれませんよ!
スイス時計業界の世界はどうでしたか?今は本当に過渡期で各社しのぎを削ってムーブメントの開発を行っています。これからどうなるのかは誰にもわからないけど移り変わる時期というのはドキドキしますね!また面白い情報があれば記事にしますね。
ではまたっ